部内における業務量が増加する見込みですが、
現在の部員の残業時間も多くなっているので、
みんなが困っていることを解決してムダな工数を
削減することで負荷軽減しようと思います。
と、いう目標を掲げて改善を進めてみて1年。
課長さんの取り組みがどうなったかを見てみましょう。
ハーズバーグの二要因理論はご存知でしょうか?
リーダーシップやモチベーションの向上という領域における理論の基であるマズローの五段階欲求説を2つの要因に分けて考えたものですが、これを勉強する前に始めた取り組みの結果がどうなったのか、1年間の結果が出ましたのでまとめてみたいと思います。
今年度の取り組みと結果
課題
生産性が低く、今後業務量が増えることで人を増やすことが必要となるが、生産性を向上することで労務費の増加を抑えていきたい。
評価方法
今年度は1年間通じて比較的安定した業務量が維持されることが計画されているため、部員の工数(通常労働時間、残業時間と有給休暇取得)の増減により効果を判断する
改善の方向性
労働環境の現場が困っていることを改善することで、業務のムダを省き、工数削減につなげる
結果
現場は困りごとを多く抱えており、取り組みを始めた第1四半期で40件もの困りごとが寄せられ、第2四半期にも20件、1年間通じて寄せられた困りごとの90%は上半期に寄せられました。
その多くが1ヶ月以内に解決できるようなものでしたから、上半期のうちに約80%の現場の困りごとは解決しているような状況がありました。
上半期終了時点で行ったアンケートでは、業務のやりにくさが減り、今まで困って立ち止まったり書類の出し直しなどの細かなムダが多く発生していた状況が是正されたといった回答が寄せられたので、下半期から急激な工数削減が進むと予想していましたが、結果は変わらず。
むしろ、年明け以降に少し増えてきているような状況になってしまいました。
考察
この改善を行うとした当初は、下図のように業務がいっぱいなので、この中で部門全体に係わる一般的な業務のムダを省いていくことに取り組むことで工数に空きを作ろうとしました。
しかし、冒頭の話にあるように業務環境というのは『衛生要因』なので、ここが改善してもモチベーション向上にはつながらなかったのです。
例えば、今回改善したもののうち、書類が書きにくいという問題を例にしますと、困りごとのままだと「面倒だな」とモチベーションが下がりますが、書類を書きやすくしても「やった!仕事がんばろう!」とはなりませんよね。
そういったわけで、やりにくさがなくなってモチベーションを下げる要因を取り除くことにはなりましたので、「助かった」、「やりやすくなった」というアンケート結果が寄せられますが、これによって生産性は向上しなかったのです。
逆に、これまでの業務量(箱をサイズ)を小さくしたり、新たな取り組みを業務量の空いたところで始めるといった、環境を変える取り組みをするにはモチベーションを上げていかないと、なかなか変化を受け入れることができません。
そうすると、仕事が減ったのでのんびりやろうに意識が向いてしまい、結果としてやるべき仕事が間延びしてしまいました。
更に悪いことに、間延びした状態で仕事をするということは、集中力が低下し、モチベーションを下げる効果にもなりますから、当然パフォーマンスを下げます。
ミスも多くなり、トラブルが増えてきたことで下半期後半にトラブル対応に割く時間が増えて、逆に工数が増えてしまうということにつながったのです。
パフォーマンスとモチベーションの関係は過去の記事にてまとめています⇩
課長さんの取り組みと結果
課題
生産性が低く、今後業務量が増えることで人を増やすことが必要となるが、生産性を向上することで労務費の増加を抑えていきたい。
評価方法
今年度は1年間通じて比較的安定した業務量が維持されることが計画されているため、部員の工数(通常労働時間、残業時間と有給休暇取得)の増減により効果を判断する。
改善の方向性
労働環境の現場が困っていることを改善することで、業務のムダを省き、工数削減につなげる。
結果
現場は困りごとを多く抱えており、取り組みを始めた第1四半期で40件もの困りごとが寄せられ、第2四半期にも20件、1年間通じて寄せられた困りごとの90%は上半期に寄せられました。
その多くが1ヶ月以内に解決できるようなものでしたから、上半期のうちに約80%の現場の困りごとは解決しているような状況がありました。
上半期終了時点で行ったアンケートでは、業務のやりにくさが減り、今まで困って立ち止まったり書類の出し直しなどの細かなムダが多く発生していた状況が是正されたといった回答が寄せられたので、下半期から急激な工数削減が進むと予想していましたが、結果は変わらず。
むしろ、年明け以降に少し増えてきているような状況になってしまいました。
正直、仕事量自体はあまり変わっていないはずなのに。
ちょっとなぜこのような結果になったか分かりません。
こうなってしまった結果を考察してみましょう!
ある理論の観点から見てみると、ひとつの要因が見えてきます。
それが、二要因理論です。
二要因理論とは
まず、ハーズバーグの二要因理論を知らないと、よく分からないことになりますので、基となるマズローの五段階欲求説と一緒に整理します。
マズローの五段階欲求説
生理的な食欲や睡眠欲のような欲求から、自分の夢を叶えるというような自己実現の欲求までを5段階に分けており、低次元の欲求が満たされることで初めて、より上位の欲求が生じるとする理論になります。
自己実現の欲求
自己の可能性や能力により、チャレンジをしたいとする欲求になります。
この欲求は、報酬ではなく、自己実現の行動そのものによって満たされます。
自尊の欲求
名声や地位を求め、周囲の人々などから認められたい、尊敬されたいといった欲求になります。
この欲求は、尊厳の欲求とも呼ばれています。
社会的欲求
集団への所属や連帯感、友情や愛情などを求めるような欲求になります。
この欲求は、愛情欲求や所属と愛の欲求とも呼ばれています。
安全欲求
身の安全や安心を求め危険や恐怖を回避したいとする欲求になります。
生理的欲求
人間が生きていくために本能的に必要な食欲や睡眠といった生理的な部分に対する欲求になります。
ハーズバーグの二要因理論
ハーズバーグの二要因理論は、マズローの五段階欲求説を使い、自尊の欲求、自己実現の欲求を『動機づけ要因』、社会的欲求、安全欲求、生理的欲求を『衛生要因』の二つの要因に分けたものです。
動機づけ要因
個人の心理的成長と自己実現の欲求を満たし、積極的な態度を引き出す要因になります。
具体的には、個人の職務に関するもので、仕事の達成や、やりがいのある仕事、重たい責任などがあります。
衛生要因
個人の成長はもたらさないものの、働く意欲を減衰させないための予防的要因になります。
衛生要因の”衛生”は、公衆衛生から来ています。
予防接種のように、病気を治すことはできないが、病気にならないように予防するものということで使われています。
具体的には、職務環境に関するもので、組織管理状況、上司・部下・同僚との人間関係、給与や労働条件、職場の安定性などがあります。
この理論の視点で、課長さんの活動結果を考察してみましょう!
考察
この改善を行うとした当初は、下図のように業務がいっぱいなので、この中で部門全体に係わる一般的な業務のムダを省いていくことに取り組むことで工数に空きを作ろうとしました。
しかし、冒頭の話にあるように業務環境というのは『衛生要因』なので、ここが改善してもモチベーション向上にはつながらなかったのです。
例えば、今回改善したもののうち、書類が書きにくいという問題を例にしますと、困りごとのままだと「面倒だな」とモチベーションが下がりますが、書類を書きやすくしても「やった!仕事がんばろう!」とはなりませんよね。
そういったわけで、やりにくさがなくなってモチベーションを下げる要因を取り除くことにはなりましたので、「助かった」、「やりやすくなった」というアンケート結果が寄せられますが、これによって生産性は向上しなかったのです。
逆に、これまでの業務量(箱をサイズ)を小さくしたり、新たな取り組みを業務量の空いたところで始めるといった、環境を変える取り組みをするにはモチベーションを上げていかないと、なかなか変化を受け入れることができません。
そうすると、仕事が減ったのでのんびりやろうに意識が向いてしまい、結果としてやるべき仕事が間延びしてしまいました。
更に悪いことに、間延びした状態で仕事をするということは、集中力が低下し、モチベーションを下げる効果にもなりますから、当然パフォーマンスを下げます。
ミスも多くなり、トラブルが増えてきたことで下半期後半にトラブル対応に割く時間が増えて、逆に工数が増えてしまうということにつながったと考えられます。
パフォーマンスとモチベーションの関係は過去の記事にてまとめています⇩
対策
今回の課長さんのように部内複数のグループを横並びでチェックし、対処するような立場や部門全体、本部全体を統括されるようなトップマネジメントの方が行う改善活動の際に陥りやすいところではないかと思います。
こういった衛生要因に対する改善活動で余裕を作った場合の注意点は以下の二つの点が重要になります。
一つ目は、『衛生要因』に対する改善活動で出来た余裕へ、すぐに別の取り組みを入れられるように並行して、『動機づけ要因』に係わる実務の改善も並行させること。
二つ目は、その『動機づけ要因』に係わる実務は個人のモチベーションを上げるために必要な有意味性や難易度、評価の透明性や公平性、自身のスキルアップなどの要素を持ったものとすること。
例えば、書類や仕組みの改善を行い、業務のムダを取り除いて工数を引き下げるのと同時に、新規アイテム開発プロジェクトを各チームに行わせたり、業務領域を拡大するような多能工化の推進などがあります。
このようにモチベーションを上げられるような『動機づけ要因』部分の改善を並行して行うことが有効となります。
最後に
モチベーション理論については、リーダー研修や管理職向けの教育などで学んだことのある方も多いと思います。知識として知ってはいるけど、それが実際の職場でどう応用できるかが重要になります。
これまでの改善策でも結果が出ているのに成果に結びついていないことはないでしょうか?その場合、改善を行ったことで、逆にモチベーションが下がってしまっているなど、業務自体ではなく業務を行うメンバーの気持ちに問題が生じてしまっていたりすることもあります。
どうしても小さな組織単位で改善活動を見ていくと、こういった事例が生じやすいため、部門長や本部長などの全体統括をされるところでは、全体で行われている活動が衛生要因に偏っていないかなど見てみると、また違った視点で効果の判断や予測ができて良いと思います。