標準化を進めようとルールを作ったのに
すぐにルールが守られなくなるのってなんででしょう?
お、標準化に取り組んでいるんですね。
ルールが守られない要因は、
①ルールが悪い
②ルールの作り方が悪い
に層別して見ることができますよ。
うーん、みんなの困りごとを吸い上げて作ったので、
大きく外れた内容ではないはずですが…
汎用性のある業務のやり方を統一したり、フォーマット化することで工数を削減しつつ、経験の少ない若手でも最低限の仕事ができるようにするなど、業務を標準化することで生産性は向上します。しかし、やり方を間違えるとただ作っただけで、誰も使ってくれないルールが出来上がります。
では、どのようにして標準化していくと良いか、整理していきましょう。
使ってもらえない標準化ルールを確認
では、課長さんはどのようにして標準化した結果、みんなに使ってもらえない状況になってしまったのでしょうか、見てみましょう。
冒頭にもありますが、ルールが守られない要因には、①ルールが悪い、②ルールの作り方が悪い、の2つの視点で見ると分かりやすくなります。
標準化した内容のチェック
標準化したルールそのものに問題があったのでしょうか?確認してみましょう。
今回は、他部署や顧客から依頼のあるたびに作成していた
計画書について、課内の統一フォーマットにしました。
課員は、関係部署や顧客から業務計画を求められた際に、担当者がそれぞれのやり方で計画書を作成していました。関係者からは、「見にくい」などのクレームを受けたり、毎回枠線から作り直す担当者もいるなど、時間もかかっていました。これらの困りごとに対して、課長さんが統一フォーマットを用意して、課員に使ってもらうようにしました。
内容については、課長さんが担当の頃に使っていたものをベースにしていて、要求事項に合ったものになっていて抜け漏れもないですし、課長さん自身も慣れているフォーマットのため確認しやすく、良いものができたと思ったそうです。
ルールを作った流れ
では、ルールを作っていった流れはどうだったでしょう?
- 課員を集めて業務の困りごと、時間がかかっていることなどをリストアップ
- 標準化することで解消できそうなアイテムを抽出
- その中で「取り組みやすさ」×「重要度」×「効果」で優先順位付け
- 優先度の高かったものについて、課長の経験やノウハウを活かした標準化ルールの作成
思ってた以上にきちんとやられてますね。
はい、QC活動の流れをベースにきちんと取り組んで、
ちゃんと課題を明確にしながら作ったので。
でも、うまく使ってもらえなくて…
こちらの課長さん、以前は「QC活動とか面倒」と仰っていたのですが、だいぶ変わりました。QC活動の流れを意識している様子から、以前の説明が生きていてうれしい限りです。
使ってもらえない要因は?
ルール自体、ルールの作り方も悪いところがない、そう課長さんは考えていますがいかがでしょう?
使ってもらえないということは、何か悪さがあるはずです。
ということで、今回は手っ取り早く課内ミーティングで使わない理由を吸い上げてもらいました。
- 網羅的になっていることで、必要のない項目も書かなくてはいけない。
- 自分の書きたい項目がない。
- 記入欄が小さくて書きにくい。
- 何を書けば良いかよく分からない項目がある。
- フォントやデザインが気に入らない。
結果は、フォーマットの使いやすさに悪さがあったこと。困りごとの吸い上げなどは課員も集めて全体で進めたのは良かったのですが、フォーマットづくりを課長だけで進めてしまったことが要因でした。
フォーマットづくりも課員と一緒にやればよかったかな…
このあと、課長さんはどのようなフォーマットだとみんなが使いやすいか、改めてみんなで作り直しました。できたフォーマットは、1ヵ月ほどの仮運用を行い、使用感を改めて共有して、全員が納得いく形でリリース。その後は、継続した運用がされているそうです。
さらに、その後も使い勝手や関係者からの要望を受けてのバージョンアップが定期的にされるようになったのですが、特別な活動としてではなく、普段のコミュニケーションの中で自主的に行われるようになっていったそうです。
使ってもらい改善が進むルールづくり
では、作ったルールを使ってもらえるようになった様子から、どういったルールづくりをしていくべきかを整理しましょう。
- 使う人の困りごとや、関係者の要求など、目的に沿ったものである。
- 使う人の意見が反映されている。
- 使う人自らが参画している。
今回の場合、1.はできていましたが、2.が少し不十分でしたね。そして、3.はできていませんでした。その結果、「やらされ感」が出てしまい、使いにくいものを使わなくなってしまったように思います。
プレゼンなどでも共通しますが、指示や運用も実際に実行する人の「意思決定」がなければ、実行されませんし、その後の継続もありません。
今回の標準化のプロセスでは、
- 生産性向上の目的を話し、みんなの困りごとを吸い上げて改善していくことで進めていますので、「共感」のプロセスは問題なく進められました。
- しかし、課長さんが一人でつくったフォーマットには「納得」ができていないため、運用されずに終わってしまっています。その後、課員とのミーティングで運用できなかった点を吸い上げたことで、「納得」のできるフォーマット作成へと進みました。
- そして、課長さんの経験やノウハウを聞きながら、自分たちで使いやすいフォーマットを構築していった過程で、「理解」が進んでいます。
- 最終的には、自分たちの使いやすいフォーマットになり、標準化の効果に満足がいく結果が得られることが分かりました。そのため、これをさらに改善していきながら、より良くすることで自分たちの生産性が上がると「意思決定」ができたことで、自分たちで改善が回せる環境に変わりました。
まとめ
今回は、課内の関係性の良い課長さんでしたので、思うように使ってもらえない状況について、課員に問いかけをすることで運用してもらっています。しかし、もう少し大きな組織、例えば会社のルールや部門をまたぐルールを作るときはどうでしょう?
すべての人が納得、理解できるルールをつくるのは難しいですよね?
しかし、その場合も自分だけでルールをつくるのではなく、関係する組織から代表者を出してもらい、ルールづくりに参画させると良いでしょう。そして、取りまとめる人は特定の関係者だけの利益にならないよう、会社全体として一番メリットのある方向を示しながら進めます。
参画することで、「納得」と「理解」が得やすく、自分たちでつくったという「意思決定」がされているため、容易にやめることもなく、不都合があれば改善を進めやすくします。
- ルールづくりの目的を明確にして、「共感」を得ること!
- ルールづくりは一人で行わず、関係者を含めること!
- 特にルールによって不利益を被る関係者は必ず参画させること!
- ルールは個人や特定の組織を有利にするのではなく、会社の利益を目的とすること!