人材育成のためOJT教育に取り組みます!
外部教育のOff-JTなどは、なかなか即効性も感じられず、
内部教育としてOJT教育に力を注ぐ企業も多いです。
ですが、部下の方に話を聞くと
え?OJT教育って受けた覚えないですけど?
このような声も多く聞かれます。
では何が悪いのか、おすすめのOJT教育ってどうやるか、
整理していきましょう。
「OJT教育」という言葉は、業務を通じて教育することを指しますが、管理職や上司はOJT教育をしているつもりでも、部下はそんな覚えはない、教育なんて受けたことがないという意見をよく聞きます。
人材育成はとても難しいですが、そんな中でとても好評だったOJT教育のやり方を整理します。
よく聞くダメな例
では、OJT教育として何を行っているでしょう。よく聞く事例を挙げます。いずれも部下が教育を受けたと感じない事例です。
教育を受けたと感じないということは、教育によるスキルアップも望めない、効果が十分に得られていない状態にありますので、ムダな時間やコストを費やしたことにもなります。
ただ実務をこなすだけ
1番多い事例はこちらです。
担当者に実務を与え、報告を受けて指導するというもの。部下が行っている業務を週報や月報といった形で報告させ、間違いや不足する点があれば指示、指導を行います。
部下の立場で見ると、「後出しで意見してくる評論家」と同じように自分が行った結果の批評を受けているだけと感じることも多く、教えてもらっていると感じないケースも多いです。特に、「もっとこうすれば良かった」「こうすべきだった」という意見を言うだけであればなおさらです。
さらにひどい場合では、報告を受けた内容に対してフィードバックもない場合が多く、「なぜ報告しているのか?」と感じている状況にある管理者も意外と多くあります。
目的が不明確な教育
次に多いのが、「なぜこの教育を受けているのか分からない」と部下が感じるもの。例えば、ある活動に同行、参画させるなどするのですが、なぜ同行、参画する必要があるのか、なぜ今の時期にやる必要があるのかなど、目的が不明確なまま指示だけ受けて参加している状況をつくるケースです。
今の担当者のスキルレベルがどこにあり、今後のスキルアップのためには何が必要であり、そのスキル習得には、この教育を受けるのが望ましい。そのため、その機会があるので参加するように。といった具合に、なぜその教育を受けさせようとするのかの明確な目的が共有できていないことで起きています。
おすすめのOJT教育
教育目的の明確化
まず、管理者と部下の間で目的を共有することです。
業務要件表やスキルマップと呼ばれるような、今後レベルの高い業務推進ができるようになるためには、どういったスキルが必要かを明確にし、そのレベルを上げるためにはどのようなことを経験し、知識として有していく必要があるかをまとめたものを使うと良いです。
スキルレベルの認定は、客観的な指標を設けることで互いの理解の乖離を抑えるとともに、考課判断の際にも誤解を生じにくいため、評価での誤解による不和を防ぐことが重要です。
必要なスキルの抽出には優秀な人、こういう人になってほしいというモデルを設け、コンピテンシーを抽出していくと、より具体的な指標が作りやすくなります。
コンピテンシーの利用についてはこちらの記事でも紹介しています。
教育テーマの共有
次に教育目的に沿った教育テーマを決めます。
その際、教育テーマは管理者である程度決めますが、部下との相談をする中で、部下側の教育目的の理解に努めます。これにより、部下も自分がこの教育を通じて、何を会得しなければならないかが分かりやすくなりますので、効果にも大きく影響します。
活動計画を立てる
その教育をどのような計画で行っていくかを一緒に考えます。このとき、お互いに計画を作ってみてから見せ合い、違う点などを一緒に考える。お互いの意見を聞きながら、どういう計画で進めるのが良いかを一緒に詰めていくのが望ましいです。
また、その際には、部下の考えた計画を批判するのではなく、理解を示した上で対等な立場で議論できると部下からも自由な発想が出やすく、また考える力の育成になります。そして、先輩である管理者がどのようなプロセスを経て、その考えに至ったかが分かりやすく理解できますので、ノウハウや経験、知識の承継も容易になります。
進捗管理とアドバイス
進捗管理も同様です。
週報や月報で報告を聞き、それに対する指示、指導を行うのではなく、一緒に活動をしてみる。そこで、やり方を見せることで部下の理解が深まります。ですから、一緒に活動した上で、部下の意見を聞き、どうすることが望ましいかを一緒に考えることが大切になります。
部下が育っていないうちは、先輩である管理者の活動が手本であり、アドバイスとなります。部下が育ってくると、部下の意見から管理者のやり方を改良した、より良いアイデアが生まれることもあります。
このように相互に高め合う機会とできるところへ持っていくこともOJT教育の大事な点にあるように思います。そして、このような関係性を構築するためには、未熟な部下のことをも尊重し、信頼し、できる限り対等に扱う意識で活動をすることです。
効果確認と評価
教育後の評価は、できる限り数値で評価ができることが望ましいです。客観性がありますので、部下も目標がはっきりしていますから、達成できたかどうかが自分でも分かります。
ですが、中には定量的な判断が難しく、定性的な評価をせざるを得ない場合もあるでしょう。その場合には、面談などを通じて、まずは自己評価を聞く。そして、管理者側での評価を伝える。そこに乖離があるのであれば、お互いに具体例を出しながら、なぜそのように評価したかを互いに理解を寄せます。
これにより、互いの理解を近づけ、納得のいく評価へとつなげることができます。また、評価に納得ができるということは、不十分なポイントも明確になりますから、アドバイスも行いやすく、部下にとってもやるべきことが明確にできます。
山本五十六の言葉
よくリーダーシップとして大事なこととして伝えられるのが、山本五十六の言葉です。
やってみせ 言って聞かせて させてみて ほめてやらねば 人は動かじ。
話し合い 耳を傾け 承認し 任せてやらねば 人は育たず。
やっている 姿を感謝で見守って 信頼せねば 人は実らず。
多くの方が、「やってみせ」をせずに「言って聞かせて」からスタートするOJT教育をしています。そして、「話し合い」も飛ばしています。ようするに、管理者側からの手本もない中でやらせてみるからうまくできない、うまくできないからそこだけ指導する。そのような状態をOJT教育と言ってしまっているのです。
まずは、手本を見せる。そして話し合うことでプロセスを理解させつつ、部下の意見にも耳を傾け、その乖離が起きている原因を正すアドバイスを行うことが大切です。
まとめ
日本の高度成長期は職人が支えたとも言われることもありますが、その職人文化は「師の背を見て学ぶ」というものでした。今の管理者が担当者のころは、教育なんてものはなく、見様見まねで試行錯誤して作り上げた経験で成り立っているかもしれません。
ですが、それを部下に求めた場合どうなるでしょう?
管理職が20年、30年で経験したことを同じだけの時間をかけて、同じレベルまで育てていたのでは会社は成長しません。自身が20年かかったところは10年、15年で到達させるようにすることが教育する上で必要な考え方です。
他社に負けない競争力を生み出すのであれば、他社よりも早く部下のスキルを底上げし、新たな検討に注力できる体制を整える必要があります。
OJT教育は先輩から後輩への技能継承の教育であり、リーダーシップが求められる領域になります。山本五十六の言葉をイメージして取り組めると、きっとより良い教育になると思います。